脊椎と雨音

詩人になりたい人の詩たち

2022-10-01から1ヶ月間の記事一覧

銀河系

声が。聴こえる。あちこちから。たくさん。高い声。低い声。早口。ゆったり。まるで。ちかちか。星のよう。ここは。銀河だ。数々の星が。きらめく。眩しくて。明るくて。いろんな色が。見えてくる。個性的な。星たち。私の。周りを。覆っている。私は。銀河…

鉛のような

最初は小さな違和感でしたそれはだんだんと全身に広がっていきました足が重くなりました手が重くなりました肩が重くなりました頭が重くなりました鉛のように重い体を動かすのは一苦労です布団に沈み込んでしまったらなかなか持ち上げられませんこれは本当に…

朝の空気はとても軽くて重力が月に近づいたよう朝の空気はとても澄んでて音がどこまでも響いてくよう朝の空気で作られる露はどのミネラルウォーターより美味しそう 風が冷たく吹いています朝の空気を循環させてお昼の匂いを運んでくるああもったいないもう少…

ハロウィンの大王さま

ごりごりと削ったかぼちゃの中身を煮込んで潰してパイにしよう。被ったかぼちゃは大きすぎて私の意識を奪いそうだ。 パンプキンパイより美味しくないお菓子はお菓子とは認められないな。 横暴まかり通る彼は一夜だけの大王さま。 さあ僕が主人公だ。傍若無人…

中原中也と僕

「愛するものが死んだ時には、 自殺しなけあなりません。 愛するものが死んだ時には、 それより他に、方法がない。」 中原中也はそう言ってその後茶店へゆきました 茶店で彼は会ったのです中原中也に会ったのです 灰色の瞳で言ったそうです「死んじゃいかん…

おくすり

美味しいご飯はお薬です香しい香りはお薬です綺麗な音楽はお薬です 体の調子はどうですか夜はよく眠れていますかご飯はきちんと食べれていますか 生きるというのは大変ですねこんなに多くのコストがかかるそんなに価値がありますかそこまで価値がありますか …

グラウディング

布団の上でストレッチをするとき私は自分の体が大地と繋がるような気がするのだ。雨に濡られて私の老廃物が布団へ染み床へ染み下の階を通って地面へと溶けていく。そのとき私は地面と一体化している。植物のように根をはりエネルギーを交換している。私は受…

詩にたい

言葉で溺れ詩にたい。抽象度を上げすりガラス1枚挟んだような、曖昧な視点からどう具体的に表現するか。その視点だけ持っていたい。現実なんか直視しないで乱視を混じえたぼやけた世界を捉えて紡いで嘯いていたい。現実なんか直視しないで。ガラス挟んでぼ…

暖色

街に暖色が増えるのは寒い季節だからなのだろうね自然の木々さえ紅や橙に葉を染めて冷えていく街を暖めようとしているけれどその努力虚しく葉はもぎとられてやがて街は白く染められてしまう吐く息の色すら染められて私達は寒さに抗えない かじかんだ手に白い…

夜食

夜中の空腹は罪の匂い。そこで食べるお菓子は罪の味。もぐもぐ。もぐもぐ。もぐもぐ。意識が朦朧としたまま私は手と口を動かす。お腹が満たされればすぐにまた眠りにつくのだ。このお菓子は睡眠への特急券。切符はお持ちですか。ええ。睡魔がそこにあります…

なにかできること

僕は何もできなかっただんだんと薄くなっていく彼女の姿またねと言わなくなって次の約束をしなくなってあまり会わない人に会いに行ってあまり食べれないものを食べに行って随分身軽そうになっていったすっきりした顔で怒らず哀しまずいつも笑顔をたずさえて…

真似っこ

君が右手で字を書くから私も右手で字を書いてみる君が左手で髪をかきあげるから私も左手で髪をかきあげてみる君が足を組んで座るから私も足を組んで座る君が走るのがはやいから私も走るのをはやく できなかった 君が背伸びで本を取るから私も背伸びで本を 取…

◆ ポエマーではないポエットだ

今週のお題「わたしは○○ナー」 今週のお題がこういうことらしいのでなるほど私はポエマーか、と思って調べたら、ポエマーとは和製英語らしい。知らなかった。英語だと詩人はpoetだそうだ。じゃあポエマーって何っていうと詩的な言い回しを普段の会話で多用す…

氷水

氷水を飲む。「冬はあたたかい飲み物でなきゃダメだよ」そう言われても私の口腔と喉は氷のような冷たさを求めているのだ。ゴクリと喉を鳴らして飲むとその氷は食道を通って胃へと降りていくのがわかる。そして冷えたお腹は痛みを発する。私の体内は繋がって…

おかえし

「生きているだけでいいんだよ」あなたはそう言って泣きそうな顔で笑ったあなたは優しくしてくれる泣きたいほど優しくしてくれるだからいつも困るのだ私に返せるものなど何もないのに「生きているだけでいいんだよ」私がそう言うとあなたはいつもそう言う (…

信念

あの子を愛すと決めたらしいその信念は揺らぐこともあるだろう固くなることもあるだろうでもその信念の芯はずっとそこにあって彼が生きている限り彼の真ん中にあって彼はその誓いを貫くんだろう羨ましいあの子羨ましいあの子その貫きが私であればよかったのに…

死はただの現象だ寂しさはそれにただ付随するだけだ誰かがいなくなった穴その穴に誰も気づかなければ寂しがる人もいない本当に孤独な人ならば死はただの現象に過ぎず寂しさなどという感情は生じることはないけれどその人が孤独でなければ周りの人が勝手に寂…

Error

正常に処理できません正常に処理できません空き容量が不足しています机の上は散らばっています床にまで散らばっています頭の中も散らばっています正常に処理できません思考容量が不足しています自分のことすら考えられない視界すら暗くなってきた意識をシャ…

キスはレモンの味だったでしょうか。いいえ。グレープフルーツの味でした。砂糖をかけたいくらい苦かった。あなたの背中を見るたびにひとふりのナイフを振り下ろしたくなる。どんな感触がするだろう。骨にかすってゴリといい、筋肉を穿ってズブという。恋は…

嘘つき

言葉をちょうだい。私が欲しい言葉だけちょうだい。苦いのはキライ。甘いのがすき。君の声で紡がれるから意味があるんだ。その声で永遠に囁き続けてよ。君にとって要らない言葉でも私にとっては必要な言葉。中身はなくたって別にいいの。さあ今日も私に囁いて…

終幕

あのとき私の体の中は、清々しく爽やかな、空洞だった。エンディングが見えているのはとても風通しが良くて、生まれてきていちばん体が軽かったような気がする。私が退場したあとの私に関する話は私の物語ではあるのだろうけれど、それはみんなにお任せする…

Z軸の向こう

拡張していく現実に 追いつけているだろうか見たい聞きたい触れたい嗅ぎたい感覚を研ぎ澄ませ0と1の海へそこに存在するものは仮想でありリアルなのだそして己の存在すら透明なものとなっていく感知し感応し互いに呼応し合えばそれが現実でないわけがない広…

加湿器

加湿器の潤す空気の透明度まるで浅瀬の淡い海水海面はラブラドライトの輝面かなボトルメールが流れ着き拙い字綺麗に並ぶラブレター体育館裏部活の匂い洗濯機回る制服青春の残り香虚しく過ぎゆく季節入社式での祝辞と礼儀回すお茶渦を巻きては渋み濃く抹茶ス…

訴え

僕の頭を鈍い音でいつもノックしてくるのは一体どこのだれだろうかそんなに僕に伝えたいことがあるのだろうかそんなに必死にならなくたって僕は君の言葉くらい聞いてあげるよ最後までだから頼むからそのノックをするのはそろそろやめてくれないか (ランキン…

行色詩

出立の日はあいにくの雨であった。折りたたみ傘を広げるも小さくて肩掛けのバッグは雨に濡れ重さをより増していく。バス停に立ってタイヤの水しぶきを浴びてまるで洗い流されているようだ、と思った。いってきます。旅から帰ったときの自分の何かしらがどこ…

朗読

あたまのなかで響く声よりもずっと声帯を震わせて発する声はよっぽどきれいで 切なくて 哀しくて 苦しくて自分のものではないはずなのにひどく感情が溢れてしまってこの物語を読むたびいつも誰かの声を思い出すのです (ランキングに参加しています。よけれ…

眠れない夜

暗闇の部屋をスマートフォンの光が照らす。薄っすらと電灯や本棚の輪郭が見える。揺れないカーテンは孤独を強調しているね。寝返りを打って丸まって、布団の中に隠れると、自分の温もりが自分を包み孤独を誤魔化してくれる。君に会いたい。僕は目を瞑る。瞼…

ガラクタ倉庫

ガラクタ倉庫の中にひとり少年が住んでいるのを私は知っていたガラクタが積み重なり幾重にも層を成しているその倉庫の中はあまりにも乱雑に入れられているので余白がたくさんあったのだ少年はその余白の中に住んでいて時折その隙間から外の様子を窺っていた…

金木犀

大きな道路をひとつ曲がって小さな路地からまたひとつ入って人ふたり並んで歩けるほどの歩道の脇から香ってくる鼻腔をくすぐり抜けていく金木犀の甘い匂い食べたらどれほど甘いだろうと幼いときは考えていた今はどれほど苦いだろうかと香りの嘘を考えている …

クロール

身体を浮かそうと四肢でもがく。その姿はよほど滑稽だろう。バチンと水面を叩いて顔を無理矢理水上に出し息をする。酸素を吸えた気がしない。だっていくら空気を取り込んでも僕の身体は沈もうとする。前に進むどころではない。僕はこの現実のような水面で、…