脊椎と雨音

詩人になりたい人の詩たち

雨の夢

ヘッドホンをはずすと不規則な水の滴る音で世界は満ちていたどおりで肌寒いわけだ音の激しさにつられるように寒さを強く感じるようになり私は着替えようと立ち上がった窓の外が光る 遅れて音がする電化製品の心配だけして私はパジャマに着替え子守歌のような…

雨の向こう、待つ君へ

灰色の雲に覆われてそちらはきっと薄暗いでしょう早く陽の光を届けたいけど風も今日は泣きたいみたいで雨雲を連れてこうとしないしょうがないから私はここで雨雲の隙間の小雨に向けて差す光を準備しておくよ虹にはみんなを笑顔にする力があるから shironekos…

午前3時の君

午前3時の君 はまるで死体のようで口元に手をかざせば微かに息があたるのだけどいびきもかかず寝返りも打たずただ静かに横たわっている陶器のように白くて冷たい肌 が現実感を曖昧にしてこの光景自体が夢のよう なそんな気がしてくるから僕はぎゅっと目を瞑…

余白

言葉にならない言葉にしない想いが多すぎて余白は真っ黒になってしまった行間には読めない文字がびっしり詰まっていてまるで砂糖に群がる蟻のようだった何故言葉にしないのだろうこんなにも感情が渦巻いているのにいや渦巻いているからこそ言葉にできないの…

ナイフ

あのとき放った言葉が、今でも刺さったまま抜けない。ナイフは刺さったままの方がいいらしい。抜けばそこから血が溢れてしまうから。だから抜かない方がいいのかもしれない。抜けばそこから血が流れてしまうから。だけれどそこに刺さっている限り、私はその…

かみなりさま

">地面がひび割れて現れたのは大きな角の生えた馬銀蒼色のたてがみを靡かせいななきながら空へと飛んだあれはきっと落ちてきた雷様なんだとだから空へと帰っていったんだとそのひび割れは祀られたああ神様でも故郷を想っていなないたりするのか私は少し安心…

氷水

じわり、と、熱が滲む 私はそれを拭い去るように、扇風機の風を強くした 蝕む温度でぼやける頭 からんと氷が音を立てる 温度に蝕まれて小さくなってゆく物体 それと比例して浮き上がる雫 それを指ですくい上げる その雫は氷から温度を受け継いで冷たかった …

午前3時の君

午前3時の君 はまるで死体のようで口元に手をかざせば微かに息があたるのだけどいびきもかかず寝返りも打たずただ静かに横たわっている陶器のように白くて冷たい肌 が現実感を曖昧にしてこの光景自体が夢のよう なそんな気がしてくるから僕はぎゅっと目を瞑…

連想詩

こちらの詩集はツイッターで募集したお題を元に詩を書くという企画で書いたものです。 お題:ブルースクリーン 突然目の前が真っ青になったいや 世界そのものが青に染まっていた文字の羅列が周りを流れてゆくああ 終わったのか俺の青写真の最後の光景はあん…

ヘッドホンをはずすと不規則な水の滴る音で世界は満ちていたどおりで肌寒いわけだ音の激しさにつられるように寒さを強く感じるようになり私は着替えようと立ち上がった窓の外が光る 遅れて音がする電化製品の心配だけして私はパジャマに着替え子守歌のような…

のど飴

けほけほと乾いた咳を吐き出すのどを労わって甘いかけらを一粒口に放り込んだ舌の上にじわりと広がる甘さと少しのメンソールころころと転がして溶かしていけば口腔の乾燥もおさまってとろりと甘い言葉が出そうになる会いたいよ。君に会いたいそしてこの甘さ…

余白

">言葉にならない言葉にしない想いが多すぎて余白は真っ黒になってしまった行間には読めない文字がびっしり詰まっていてまるで砂糖に群がる蟻のようだった何故言葉にしないのだろうこんなにも感情が渦巻いているのにいや渦巻いているからこそ言葉にできない…

消えゆくもの

するりと消えてゆくするりと溶けてゆく心の底に貯まる言葉などほんの一握りでしかない (ランキングに参加しています。よければ応援お願いいたします。)

幸せは痛いですか

言葉のナイフを人に刺すつもりで研いでいる人はどれくらいいるのだろう多分きっと大半の人は研いでいるのがナイフだとは思っていないし、突き刺す相手がそれを読んだ人間だとも思ってないのだろうそのナイフが刺さったときの衝撃それを幸せと呼ぶときもある …

盗んだ月

盗んだ月を土産に君のもとへ訪ねたら空が可哀相だよと君は空に月を返してしまった君が月を好きだというからこっそり盗んできたというのにそう言うと君は笑ったあなたと一緒に眺める空にあるから好きなの と言われてしまっては僕は月を見ながら反省するしかな…

情報

1日のうちにどれだけの文字を、私は摂取しているのだろう流れ消えていくジャンキーな言葉たちインスタントのように現れては消費され言葉は本来の意味を発芽できずにいるまた流れてきた文字列を私はさらりと流し読みするその言葉を噛みしめることなく言葉た…

私に

私が私であることに対して私は私でいたいと思っていないわけではないけれど少しばかりの不満はもちろんあってそれは昔からあるものもあれば最近気づいたものもある。それらをひっくるめたものが私なのなら私は私でいいのか疑問を抱くがそうでなければ紡げな…

この世のものに似てる

ろうそくの灯りに似ている気がした少しおぼろげなその灯りはそこらを飛んでいる鬼火に似ている重たくて暗い雲に似ている気がした地獄の空の方が暗いけど雨が降る直前の重たそうなあの雨雲どうしても思い出してしまう生まれる前の地獄のこと (ランキングに参…

埋葬像

冷たい水が頭からかけられて、その寒さに私は震えた。いつか私は美しくなるのだろう。いつか私は可愛くなるのだろう。いつか私は綺麗になるのだろう。いつか私は賢くなるのだろう。いつか私は格好良くなるのだろう。そう思って歩みを進めてきた。 少しずつ、…

静寂の中へ

気付いたとき私の周りにはたくさんの花が咲いていた彼女たちは静かに私の耳へ風の囁きを届けてきていたその音はきっととても静寂に近く私はおそらく自ら望んでここへ来たいつの間にか川のせせらぎが聞こえるようになり私は少しずつそちらへ近づいているよう…

春の報せ

ひとつの報せが今朝届いたこれからそちらに向かいます と梅の香りの手紙が一つもうそんな時期ですかとそれを読んだ君は深く息をついてそれじゃあそろそろ準備をします と忙しなく旅支度を始めたなぜ会わないんだい?と聞くと彼女は眩しすぎるので と冬の君は…

雨をやめてよ

雨をやめてよ。部屋の中で聞く雨音は好きだけど外出するときは好きじゃない。雨をやめてよ。部屋の中で聞く雨音のリズムはすごく落ち着くけどそれに打たれるのは好きじゃない。雨をやめてよ。雨粒は小さなギロチンで私を断罪しようとする。雨をやめてよ。私…

朝焼け

夕陽の向こうはどこかの朝焼け。焦げた匂いが空を焼く。冷めれば広がる水晶色に僕らは透明な海を見る。潮風の幻覚を感じる波打ち際の泡のような雲は陽を点すのを手伝って、赤紫に滲んで光れば、焦げた紺色が空を覆う。火花は星になり点々と煌めいて、僕らは…

嘘だとしても別にいいんだ嘘をつき続けてくれるならそれが僕にとっての真実だから僕が知らなければそれが本当でだから君はずっとその嘘を守り続けてよ僕はそれを信じて振る舞うからそしたら僕は本当になれる (ランキングに参加しています。よければ応援お願…

暮れる月

朝焼けがはじまっていた黒に近い紺色の空の端がピンク色に染まっているあれだけ光っていた月は白く青ざめ紺色のカーテンを引き連れて沈もうとしていた朝が来る私は月が沈んでゆくのを名残惜しく見守る月と太陽が同じ地平線に並んだとき二人は同列に私を照ら…

桜の終わり

桜の終わりは梅雨というガンマン。雨粒の銃弾をたくさんの銃に装填したら一斉に花びら目掛けて撃ち落とす。桜の小さな花弁なんて風という空気の圧で舞ってしまうのだから、そんなに急いで撃ち落とすこともないだろうに。 ぼたぼたと銃弾の音がする。この銃弾…

映画館

束ねられた光でできた映像を見るとき、そこにはないはずの体温があって、鼻腔が乾いて、自分のものではない思いが湧き出る。それは自分と外界を隔てるガラスに結露となって形を成して垂れていく。口が乾いていく。安そうな紙コップに入った割高のジンジャー…

雪の言葉

舞い散る雪は誰かのつまらなさ。乾いた感想。言葉にするほどでもない思い。だから酷く冷たい。発することも聞くことも求められなかった言葉は凍りついて、はらはらと控えめに降ってくる。舌に乗せれば最初から何もなかったかのように溶けて消え、なんの味も…

地獄へ参ります

私は死んだら地獄にゆくのだと、エスカレータ式に進学した学生の時のようにそれが当然と思っている。天国は信じていないのに地獄は信じている。そもそも清廉潔白な人間を信じていないから、天国も信じていない。 あるとしたらそれは多分ちょっとましな地獄く…

爪やすりを武器のように持って人指指の爪を研いだ。表面を磨き綺麗に光を反射するようになったらベースコートを丁寧に塗り、それが乾いたら真っ赤なマニキュアを塗る。中指も同じく光らせたあと青色のマニキュアを塗る。何度も何度も塗り直す。分厚くなるま…