脊椎と雨音

詩人になりたい人の詩たち

首の瘡蓋

首と顎の境目についたロープの跡が瘡蓋になって、つつくとポロポロと剥がれ落ちた。これは僕の勇気の証であり、失敗の証であり、生きるためのたった少しの燃料である。僕がロープを結んでいるとき誰かは花束を結び、僕がロープをかけているとき誰かは恋人の…

詩酒

酒に酔って書く文はアルコールの匂いを含んでそれでいてつまにみぴったりだ特にこんな一人でしっぽりしたい日にゃ自分のための言葉が特に美味くて旨くてしょうがないそこにあるのは万年筆だがそのインクですら飲みたいほどに酒に言葉に溺れて乱れ (ランキン…

斯界

社会の縮図というけれど縮めてしまっては意味がない切り捨てられた小数点以下それはもしかしたら私で社会にいないことになっているそしたらきっと楽だろう幽霊のように日々を過ごし社会貢献など意味はなくそこに私はいないのだ (ランキングに参加しています…

体温

あなたがわたしに触れるとき考えていることはわたしではなくあなた自身のことだ自分の熱を確かめるためあなたはわたしに触れようとするでもわたしは温度計などではないのでその手からするりと逃げるのです (ランキングに参加しています。よければ応援お願い…

愛と嘘

愛してると呟いたときに伝わる温度のいくらかはマガイモノだ平熱より上った体温の差は嘘偽りで平熱でそれを伝えられるようになったときはじめてそれは本物に成り代わるけれど嘘偽りの熱はあまりにも魅力的だだから世界はこんなに嘘と偽りにまみれている (ラ…

明日

明日へ行きたくないから眠らなかった眠って目が覚めたら明日になってしまうだから私は眠らなかったでも気づいたら寝て気づけば明日だったどう足掻いたって明日ってやつは私のもとへやってきて私の邪魔をしていくんだだったらいっそ立ち向かってやる私は目覚…

絶対

絶対なんて言葉信じてないんだ絶対って言う奴はみんな嘘つきだった絶対って言葉を使わないやつほど絶対信じられるんだ (ランキングに参加しています。よければ応援お願いいたします。)

グレープガーネット

摘み立ての葡萄を少女が踏みつけると透き通った果汁が固まって紫色の宝石になるらしいそれは穢れた男が握るとあっという間に溶けてしまってだから女性しか身に着けられないあの人の胸元であの人の指であの人の耳たぶで光っているものそれはあの人の清らかだ…

水蒸気

加湿器の水蒸気がときおり空気とともに入ってくる。この水分は乾いた私を救う無数の宝石たち。淡いLEDに照らされ青く光ると家の中なのに森の中の匂いがする。ここは青く光る葉のなる森だ。湖から浮き出たものたち。それはさざれのように私に流れ込む。 (ラ…

バレンタイン

甘いものが苦手な君バレンタインにチョコを送るのは製菓会社が始めたことで外国では花束を送るそうだだけれど君は花束よりも僕との美味しい食事が好きってことちゃあんとわかっているよ寒い日に二人で鍋をつつく締めは雑炊たっぷり満喫してほら幸せなバレン…

忘却

それはもしかしたら夢だったかもしれないだってその思い出だけうまくなぞれないのだ輪郭すらおぼろげで舞台も役者もぼやけて見えるけれどそれは夢じゃなかった私の忘却は既に始まっているみかんの腐る匂いがする (ランキングに参加しています。よければ応援…

子供の頃

憧れだった。それは期待と羨望でできていた。そして今思い返すとそれは郷愁と悲哀になった。子供の頃の秘密基地。自然の匂いと無機質な音。そこに宿る子供たちの気配。その気配はもうどこにもない。 (ランキングに参加しています。よければ応援お願いいたし…

赤い言葉

私の腕の赤い跡からぽたりと雫が落ちていった。それは詩になるはずだった言葉だ。落ちてしまったのだからそれがどんな言葉だったのかわからない。多分今まで落としてきた雫は組み合わせたらきっといい詩になるだろう。赤い液体に隠れた言葉。それを確認する…

遅刻

遅刻する! と連絡が来た僕は 了解 とだけ返信した彼女は大体8割の確率で遅刻するでも僕はそれを許す何故なら彼女の遅刻は僕のためだから僕と会う時は可愛くいたいからとこだわって努力してくれているからでも僕的にはそのままの君が好きだから気にしなくて…

波形

音声波形が君の声を形として表している僕の声の波形とは全然違う波が表示されていてなんとなく君の声の方がなめらかな気がしたこの波形が僕の鼓膜を震わせているのかと思うとこの棒線グラフすら愛おしく思えてくる視覚で捉えられるようになった君の声それは…

サンストーン

太陽が涙を流したらしいいつもは雲に泣いてもらっているのに月と喧嘩してしまったらしいだから最近新月なのだ真っ赤な涙は零れ落ちるたび結晶になって降り注いで地球の大地を穿ち抉ったそれを見ていた月はすぐに彼女の光を反射して仲直りしようと声をかけた …

月が欠ける

月が欠けていくのを何もできずに見ていたあの冷たそうな光は太陽の光の反射だからきっと見た目よりもずっと温かいのだろう今度欠けたら月はもう元に戻らないらしいあの光が見えなくなってしまうのは残念だ僕は発泡スチロールを削って丸い形にして自分だけの…

それはまだ花開く前蕾を膨らませている最中のこと君は確認しているどのタイミングでどのように花咲くべきか君は戸惑っている周りが次々花咲く中君は焦っている自分が花咲くことで何が変わるのか今かもしれないまだかもしれない君はまだ花開かないでいる (ラ…

微熱

微熱があるときの世界は違って見えるいつもよりも高い温度を纏う世界吸う空気は冷たく吐く空気は熱を持っているお水はいつもより冷たくて飲むとぞわりと背筋に走る熱いお茶は温度が近づいただけ飲みやすくゆったりと体に染み渡る重たい体で見る世界少し呂律…

雪の精

夕方、薄暗くなり、向こうにいる人の顔が見えず姿の影だけ見える頃逢魔が時ともいうその時刻、私は見た気がするのだ木々の痩せ細った枝に積もった雪が自重に耐えかねバサバサと落ちるその間雪と雪の間に君によく似た色白の雪の精が座っていた (ランキングに…

二人

あの人の指が私の輪郭をなぞる想像をするそれだけで私の体は熱を持つあの人の熱とぶつかって交わりたい体をぴたりと密着させてシーツに二人分の汗と匂いが染み込んだら私とあなた、もう離れない互いの香りと体温を求めて世界にふたりきりになる (ランキング…

足音

足音が追いかけてくるヒールの高いこつこつという足音私はそれから逃げるように早歩きになるするとその足音のテンポも速くなるこつこつ こつこつそれは私を追い立てるいつも私を追い立てる早く歩け 早く動け 早く働け私はその足音から逃れることはできない …

君の根底

君の根底にあるものはなんだろう子供の頃の思い出?お母さんに言われたこと?お父さんと一緒にやったこと?先生に教えてもらったこと?友達と喧嘩したこと?その思考は呪いのようなものだ底にこびりついて剥がれないこれから君は変わるのかなそれとも変わら…

ころされる

ころされるかもしれない、と思ったことがある。それは誰でもない、私自身にだ。どうやって私を殺すのか。絞殺か毒殺か殴殺か。階段の上から突き落とされるかもしれない。だから階段を歩くのが怖かった。寝てる間に首を絞められるかもしれない。だから眠るの…

頭痛薬

愚鈍の気配をまとって頭痛はやってくる。頭が痛い。それは低気圧を引き起こし空気を対流させ空に滝をつくる。頭が痛い。冬なのに蝉が、鈴虫が、蛙が同時に騒ぎ出し私の鼓膜を刺激する。頭が痛い。透明なくせに一丁前に体重を持った背後霊が私の肩を圧迫する…

エナジードリンク

エナジードリンクには誰かの元気がつまっている。誰かが飲めば誰かが元気を失う。元気は循環している。魂のように。水のように。空気のように。私の隣の人が飲んだ。私の斜め向かいの人が眠った。隣の人は元気に電車の扉をくぐり、斜め向かいの人は二駅後で…

匂い

太陽の日差しの色は熱された樹木から滲み出る樹液のようなもので、それを必要とする虫達のように私達はそれを食べなければいけない。舌にのせた瞬間に広がる灯の味はどうも鼻について好きじゃない。目から皮膚から入ってくるねっとりとしたその感触がどうに…

基底現実

基底現実を基底足らしめるものは多分皆が思っているより多いけど少ない。そこに含まれるのは天気。でも仮想現実にも存在する。そこに存在するのは猫。でも拡張現実にも存在する。そこに存在するのは電柱。でも代替現実にも存在する。そこに存在するのは声。…

青信号

歩行者信号の青色は勿忘草の香りがする。けれど雨の日のそれは遅れた葉桜の色。点滅は雨音に合わせて手を叩き、メロディとは違うテンポを刻む。私はその中を歩いていく。傘はどこかへ流れ行ってしまった。雨は私の血液になりたがっているかのように私に張り…

足音

どこからともなく聞こえるのです私を追いかけてくる足音が私が歩けば歩いてくるし私が走れば走ってくる必ず追いつかれそうなのにそれは私に追いつきはしない後ろを振り返っても誰もいないそれはもしかしたら私なのかもしれないと気付いたのは昨日のことでした…