脊椎と雨音

詩人になりたい人の詩たち

2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

片恋

私は夢想するあなたと手を繋いだところきっとあなたの手は大きくて私よりあたたかいんでしょう私は妄想するあなたが愛を囁いてくれるところ歯の浮くような台詞さえあなたが言えば自然でしょう 本当はどうかなんてどうでもいいの空想の彼私の望み通りの彼それ…

退屈

退屈な時間ができるとつい考えてしまうんだこの足が宙へ躍り出たときの体の軽さや吊られたときの重力の重さあの水を飲み干したときののど越しの良さやその刃の切れ味の鋭さ 僕はそれを夢想してはいつも目を覚ますように退屈な時間から抜ける 退屈は僕を殺す…

浮力

ぷかぷかと浮いている海に浮力を感じながら上へけれどもう上がれなくて下へ重さが戻ってくる体へ ここは海ではない感じるのは重力だけ力の抜けた体には空虚な重りが詰まってる (ランキングに参加しています。よければ応援お願いいたします。)

夜に眠る

夜に眠ることは勇気がいることだって知ってた? 今日を終わらせる勇気明日を始めさせる勇気過去を考える勇気未来を考える勇気 ほらたくさんの勇気がいるときだから勇気が足りない人は夜眠るのが怖くなっちゃうんだ 本当は勇気がいることなんかじゃないのにね…

言葉

言葉。それはときとして胸を刺す。それはときとして心臓を鷲掴みにする。それはときとして涙を流させる。音や匂いや形を変えて、言葉は真実を伝えようとしてくる。嘘を伝えようとしてくる。感傷を揺さぶろうとしてくる。その言葉の重みはどれくらいだろう。…

記憶

私が私として在るために必要なものは、多い気もするし案外少ない気もする。今必要なものは多分少ない。きっと老いるにつれて減っていくのだろう。幼い頃はもっとたくさんのものが要った。それらと関わったという過去があれば、今の私は大体成立する気がする…

しにたみくん

しにたみくんは、いつも私の傍にいてくれる。 朝目が覚める。セットしたアラームが鳴る前に起きてしまって、のろのろと手を枕元のスマホに伸ばし、手に取ってアラームを解除する。はぁ、と欠伸ではなく溜め息をついて、私は起き上がる。 また〝今日〟が来て…

雲は水で出来てるんだよ、とパパに教えられたとき嘘だ!とボクは叫んだ雲は綿あめだと信じてたから学校で雲について学んだとき素直に感心したパパの言うことは本当だったのかとでも今でも思うんだ飛行機に乗って雲を見下ろしたときやっぱりこれは綿あめじゃ…

立て枯らし

髪を金髪に染め上げて眉は細めまつ毛は多めアイラインは目尻を上へ跳ね上げて薔薇色のリップを装備する私を強く見せるための偽装私は臆病で弱いから少しでも強く見せていたいそうしたら私を罵ってくる人が少しでも減るでしょう? (ランキングに参加していま…

子供

子供らしくいなさい無垢で無邪気で元気で天使で子供らしくありなさい 僕はいつも考えている大人を喜ばずにはどうしたらいいかわからないことは全部質問してたまにワガママを言ってみたり手を振りほどいて走ってみたり気まぐれに抱きついてみたり 子供でいる…

辺つ波

寄せる波は還るためにやってくる新しい水が混じり合う砂とささやかな音を奏でながら踊るくるくると相手を変えながらそこにはいつも新しい出会いがあってそこにはいつも新しい別れがある水の分子が砂と溶け合うその瞬間に泡がはじけて生まれるものそれは潮風…

バランス

君を一目見たときに何故だかわからないけど胸が高鳴った君のどこがそんなに良かったんだろうしいていうなら君が君であったこと確かに君は整った顔をしていて、ほっそりとした体形で、少し背が小さめでそのバランスに惹かれたんだろうか僕にとっての黄金比は…

繰り返す日々

同じことの繰り返しの日々そう言ってしまうけど本当に同じだろうかその日の天気、その日の服装、その日の気分笑った回数、ため息の回数、話した相手本当は違うのに、何故同じに感じてしまうんだろう空から女の子でも降ってきたらそんなことはなくなるのに (…

冬の朝

冬の寒さというのはどうにも厄介この上なく私は朝布団と毛布を離そうとしない目覚ましが何度も鳴って耳障りこの上なくけれど私は意地になって布団から這い出ようとしない結局ギリギリまで起き上がらずに私は慌てて朝ご飯をかきこむことになる冬の朝というの…

私は私である私はあなたではない私は君ではない私は私でしかない私の喜びを知るものは私だけ私の楽しみを知るものは私だけ私の痛みを知るものは私だけ私の悲しみを知るものは私だけ私を知っている私を理解しているそんなこと云うやつは嘘つきだ私は私にしか…

比較

君と私の手の大きさ君と私の背の高さ君と私の声の高さ君と私の髪の長さ外見は違うことばかりでも内面は気が合ったねだからこうして二人でいるんだ比べ合いっこも悪くない (ランキングに参加しています。よければ応援お願いいたします。)

走る

風を切る音が耳元で鳴っている。足を交互に踏み出しては地面を蹴る振動。鼓動は早く息は短く。足よもっと速く動けと腕を振る。ゴールテープは目前だ。できれば一着が取りたい。風と一体化するこの時間が好きなだけだけど、良い順位であるほど風と一体化して…

言葉

きみがすきです。シンプルな言葉に込められる思いなんてたかが知れているね。きみがきらいです。でも真逆の言葉は途端にその言葉の重みを増すね。 だからきみへ伝える言葉はいつもまよってしまうんだ。なるべく僕の大きさと重さを正確に、できれば正確に伝え…

木々の葉の間から漏れ光るそれは風に靡くことなく真っ直ぐ降りてきてまるで射手座の弓矢のように私という存在を射抜く 指の隙間から溢れ光るそれは挟まるものを暗く染めてまるでサイダーの泡のようにはじけ光りながら私を包む 射抜かれるあたたかさと包まれ…

天使

地に足を着けて生きなきゃだめだよ、と君は言った。君は少しだけ浮いていた。僕はそれに憧れていたのだけど。浮いていて良いことなんて蟻さんを踏み潰さないくらいね。君はそう言って寂しく笑った。どうして?と僕が尋ねると君は恥ずかしそうに笑った。「足…

ステンドグラス

ステンドグラスに映っているのは私ですあなたの前で懺悔をする前の半透明に透けるほど罪の意識で自分が消えて私は言葉を紡ぐたび色を得ていくのでしょうひとつふたつと区切られてひびがはいったようになって割れそうで割れないところまでいってやっと私は許…

理由

理由を教えてと君は言った理由を僕は考えたけれどそんなの後付けでしかないしいていうなら君が君だから好きなんだ僕の名前を呼ぶ声や髪を耳にかける仕草や暇そうに見つめる爪への目線挙げればたくさん出てくるけれどそれは後から気づいたことで気付いたら君…

スーパーノヴァ

見つけた光は星だった超新星爆発、というやつらしい僕らはその光を見ながら離れて通話をしたやがてその光が見えなくなったとき僕は言った そろそろ一緒に住もうか同じ場所から、違う星を見ようよ (ランキングに参加しています。よければ応援お願いいたしま…

苦杯

別に苦いのを飲みたかったわけじゃないでも別に苦いのは嫌いじゃないと思う辛くて苦しくてしんどい中にぷかぷか浮かんでいるのは別にそんなに嫌じゃないんだよ皆に可哀想って言ってもらえて大変だねって労ってもらえて同情引いて心配されてすると僕はここに…

夢の私

私は私のことだけをひたすらに考えていたい私は私のことですら半分も理解できていないからこの小さな脳みそに残る自分という不確かな記憶擦れて掠れて傷んだビデオテープのようだ再生するたび薄くなってくひたすら私はそれを見るいや見させられている夢が私…

大したこと

たとえば首筋に落ちた雨粒一つたとえば足元に転がった空き缶一つたとえば目元に貼り付いた髪の毛一つ大したことはないでしょう大したことはないでしょうだけれどそれに気づいて意識を向けるとふと自分の輪郭がぼやけていたことに気づくのです (ランキングに…

皆既月食

月が食べられていくゆっくりと味わいながらそれは深く寂しく静かな味体の底にしんと響いてするりと溶けていってしまう少しずつ口に入れては舌の上で味わって飲み込むときにはほらもう消えてしまっている (ランキングに参加しています。よければ応援お願いい…

早朝覚醒

目が覚めたがまだカーテンの隙間から朝日の光は入ってきていなかった。暗闇だ。今は午前四時。秋から冬に変わる瞬間はひどく寂しい。私はこれからはじまる今日のことを憂う。寒さは鉛だ。押しつぶされそうになりながら毛布を引っ張って被る。ああ嫌だな。何…

自分へ

自分自身のことをいちばんよくわかっているのはもしかしたら自分じゃないかもしれないそれは恋人かもしれないし、親友かもしれないし、赤の他人かもしれないけれど自分しかわかっていないこと誰にもわからない自分のことそこに向けた言葉を言えるのは自分だ…

人という字はヒトとヒトが支え合ってできているというのは嘘っぱちだって知ってるかい人という字はヒトが一人できちんと足を踏ん張って立っている様子が元なのさ当たり前だろう一人で立てない人間が他人の支えになれるわけないだろう つまりお前は支えられな…