脊椎と雨音

詩人になりたい人の詩たち

映画館

束ねられた光でできた映像を見るとき、そこにはないはずの体温があって、鼻腔が乾いて、自分のものではない思いが湧き出る。
それは自分と外界を隔てるガラスに結露となって形を成して垂れていく。
口が乾いていく。安そうな紙コップに入った割高のジンジャーエールで喉を潤すと一瞬だけフィクションの世界に引き戻される。でもそれは炭酸の泡のようにはじけてまたノンフィクションへ戻っていく。
そこでのあなたは雑魚なのです。脇役なのです壁なのです。何が起きようと手が出せない。でもそれってフィクションでも起こるよね。
そのことに気づいたときジンジャーエールの辛さが舌を突きくたびれたソファーの匂いが鼻につくようになる。背もたれの居心地の悪さまで気づいてしまったらもう戻れない。さようなら。フィクションにただいま。
その光の束は花束なのだ。あなたへ、あなたと同じような人へ向けた。フィクションとノンフィクションの狭間へ案内する小さくて白い花束。無くした券売機で買った小さな券は多分椅子の下だよ。

 


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