脊椎と雨音

詩人になりたい人の詩たち

埋葬像

冷たい水が頭からかけられて、その寒さに私は震えた。
いつか私は美しくなるのだろう。
いつか私は可愛くなるのだろう。
いつか私は綺麗になるのだろう。
いつか私は賢くなるのだろう。
いつか私は格好良くなるのだろう。
そう思って歩みを進めてきた。

少しずつ、けれど精一杯、サイフォンでコーヒーを淹れるように、そっと、私の中に貯めていた。
それは水彩で描く風景画のようでもあったし、少し調律のゆるんだピアノのようでもあったし、油の切れたタイプライターのようでもあった。

たくさんの声が聞こえる中、私は私の指先が羊皮紙をなぞる音に耳を澄ませなければならなかった。
私のつま先が水面を蹴ればさざれ石が跳ねふくらはぎを引っ掻いた。
私の腕が、首が、レースに編みこまれ昇華されていくのを、他人事のように見ていた。

辿り着いた先は空と海を混ぜたような深みのある水色の、空虚な寂しさの広がる穴だった。
私はここを目指していたのだろうか。
美しい風景画、美しい旋律、美しい文章。
それらの行き着く先。
私の足跡が見える。
ひどく危うげで脇道に逸れながら続いている足跡。

人は皆ここに辿り着くのだ。
それを悟った私は静かに目を閉じた。

 


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