脊椎と雨音

詩人になりたい人の詩たち

棺桶

夜は好きだ
遮光カーテンを締め切り照明を全て消して
この家にアナログ時計はない
秒針の音は響かずでき得る限りの静寂が用意されている
暗順応した瞳が部屋の中を見回す
自分の部屋のようで自分の部屋でない
深呼吸をすれば浮遊感に包まれる
ここは大きな棺桶だ
毎晩私は埋葬される

そして翌朝生き返る
遮光カーテンの隙間から照らされる朝日によって
体には重みがのしかかる
生きるということの覚悟
その重さ
私はまた埋葬されるのを楽しみに日々をこなす
ぼんやりとする時間があれば夢想する
暖かい布団で暖められた私の体
もし布団がなければ冷たくなるのだろうか

雨の日の雨音以外響かない静寂
耳が聞こえなければ耳が痛いほどの沈黙になるのだろうか
暗順応という反応で見えてしまう暗闇の中
目が見えなければどれ程の闇が見えるのだろうか

生きるための呼吸活動
それが止まったときどれほど楽になるか

 


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スマホ

スマホの画面を滑る指
予測変換はいつも的外れ
イマイチな言葉を並べながら
それでもこの情景を
並べて加えて見せつけて
文章を編んでは置いていく
それが私にできること
生きている
その証

 


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君の爪

きらりと光る君の爪が視界に入って
僕は思わず目をつぶった
輝いていて眩しくて
君の爪は夜空の一等星のように
輝くために磨かれていた
僕の視線に気づいた君が
なに? と首を傾げたけれど
僕は何と言っていいかわからず
なんでもない と
君の爪の輝きを
忘れないよう焼き付けていた

 


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回復薬

あたまがいたいと彼女が言うから
薬を飲んでと促した
それはいやだと彼女は言うから
どうしてなんだいと問いかけた

頭の痛みは心の痛み
傷口のない傷が信号を発し
私に訴えかけてくる
私はそれを受け止めるべきだ
たとえ傷口がなかろうとも
それは傷だと認識すべきだ
これは私の戦いなのだ
目には目を 歯には歯を
心には心を
私に傷をつけたもの
許しはしない逃しはしない
地獄の果まで追い詰める

彼女は戦士のようだった
じゃあ尚更と僕は返した
万全の状態で、戦わないとね
彼女は薬を飲んだ

 


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三角定規

三角定規は嫌いだと君は言った。どうして?と聞くと真ん中の穴から幽霊が見えてしまうからだそうだ。覗かなければいいんじゃない?そう言うとそれでもだめと言う。ノートに置いたそのときに、穴から目玉が見えるらしい。僕は穴から世界を覗いてみた。危ないと翳した彼女の手のひらの目と目があった。

 


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