棺桶
夜は好きだ
遮光カーテンを締め切り照明を全て消して
この家にアナログ時計はない
秒針の音は響かずでき得る限りの静寂が用意されている
暗順応した瞳が部屋の中を見回す
自分の部屋のようで自分の部屋でない
深呼吸をすれば浮遊感に包まれる
ここは大きな棺桶だ
毎晩私は埋葬される
そして翌朝生き返る
遮光カーテンの隙間から照らされる朝日によって
体には重みがのしかかる
生きるということの覚悟
その重さ
私はまた埋葬されるのを楽しみに日々をこなす
ぼんやりとする時間があれば夢想する
暖かい布団で暖められた私の体
もし布団がなければ冷たくなるのだろうか
雨の日の雨音以外響かない静寂
耳が聞こえなければ耳が痛いほどの沈黙になるのだろうか
暗順応という反応で見えてしまう暗闇の中
目が見えなければどれ程の闇が見えるのだろうか
生きるための呼吸活動
それが止まったときどれほど楽になるか