脊椎と雨音

詩人になりたい人の詩たち

午前3時の君

午前3時の君 は
まるで死体のようで
口元に手をかざせば微かに息があたるのだけど
いびきもかかず寝返りも打たず
ただ静かに横たわっている
陶器のように白くて冷たい肌 が
現実感を曖昧にして
この光景自体が夢のよう な
そんな気がしてくるから
僕はぎゅっと目を瞑っ て
目を覚ますよう 祈った

 

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雨椎零第一詩集『雨音は乾いた猫の匂いがする』やっと発売となりました。

雨椎零第一詩集『雨音は乾いた猫の匂いがする』やっと発売となりました。
これまで書いていた詩と書きおろしとが載っています。
表紙絵挿絵は『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』『膵臓がこわれたら、少し生きやすくなりました』などの永田カビさん、裏の紹介文は『h-moll』などを書かれている詩人・平川綾真智さんに頂きました。ありがとうございます。
きっとあなたの中に残る言葉があると思います。是非お手に取ってみてください。

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連想詩

こちらの詩集はツイッターで募集したお題を元に詩を書くという企画で書いたものです。
 

お題:ブルースクリーン
 
突然目の前が真っ青になった
いや 世界そのものが青に染まっていた
文字の羅列が周りを流れてゆく
ああ 終わったのか
俺の青写真の最後の光景はあんな滑稽なものだったのか
写真が青い炎で燃えていく
死にゆく自分の人生を 俺は0と1で感じていた


お題:とにかく
 
とにかく話だけでも聞いてくれないか
なにしろ君に知っておいて欲しくて
なにせ君が好きすぎて自分でも
とどのつまりおかしくなりそうで
要するに君を愛してるって話なんだけど
所詮伝わる気持ちって限られているから
とりあえず手を繋いでもいいかな
  
 
お題:貧乏ゆすり
 
多分彼は貧乏神にでも取り憑かれているんだと思う
ずっと震えている彼の膝
右が疲れたら次は左 左が疲れた次は右
きっと神さまが膝の上に乗って遊んでいるんだろう
上下に揺れる視界で 神さまは考えている
彼の膝を止める方法を


お題:旅
 
僕が目指すのは僕の見たことのない景色
そんなのはどこにでもあって
住んでいる近所の裏路地だって当てはまる
僕の小さな旅 歩いて行ける範囲の景色
そして僕はいつか目指すのだ
僕の大きな旅 それは空を飛び海を潜り
誰も見たことのない景色を得る

 
お題:夢と幻想
 
いつか得られるかもし れないもの それは夢
絶対得ることができないもの それは幻想
私は夢の中で幻想を見た
ここよりもっと綺麗な場所
そこには絶対辿り着けない
ただそこに至るまでの道のりだけ
私に与えられるのだろう


お題:疲れた
 
どうにも今日は重力がいつもより強くなっているようで
あるいは引力は働いているようで
体が床とくっつきたがってしょうがない
けれどお腹は減るもので
立って何か作らなければならないのだけど
起きたところで頭の中身は地面に落ちたままのようだ
離れた思考はぼんやりとしか見えなくて
僕はまちがえてふりかけをゴミ箱にふりかけた

 
お題:君のとびら
 
絶対見えないものがある
君の服の中 頭の中 心の中
頑丈に閉ざされて見えないもの
君の感情 思考 感覚 思想
好奇心と探求心に煽られ君と話しては見たけれど
どうも私の好奇心も探求心も君の鍵にはならないらしかった
  
  
お題:何も考えてない会話
 
暇だな
暇だね
しりとりでもするか
カノン
終わるな
なんごく
旅行行くか
カノン
聞けよ
 

お題:遠距離にあるお店のドーナツ
 
車で一時間かかるお店のドーナツが美味しいと評判だ
けれど本当に一時間かける価値があるのだろうか
そんなに時間をかけるなら近所のコンビニスイーツでも
君と一緒に食べた方が有意義な気がする
あ、そうか
一緒に行けばいいのか
 

お題:捨てる 拾う
 
捨てる神あれば拾う神ありと云いますれば
喩えばわたくしがこの鉛筆を落としましたとて
代わりはいくらでもありますのです
よってこの鉛筆を拾われたとて
その人を神とは思いませぬ
しかしその鉛筆によって
誰かとの縁ができるのでございましたらば
拾う神は縁結びの神となるのでございましょう
 
 
お題:憧れ
 
この瞳が映すもの
あなたのその影その姿
この鼓膜を震わすもの
あなたのその声その吐息
手を伸ばせば届く距離
けれど掴めても届かない
この想いが募るのもの
あなたの存在その背中
 
 
お題:受け身の恋
 
好きだと言ってよ愛してると言ってよ大切だと言ってよ大事だと言ってよ
君からあなたからお前から言って欲しいんだ
だってそんなこと恥ずかしくて言えるわけもないから
お願いだからその言葉を投げかけてよ
そんなやつ放っといてこっちを向いてよ
 
  
お題:幼きうそという贈り物
 
忘れないよ、と言った気がする
気がするだけでよく覚えていない
子供の頃の記憶なんてそんなものだ
けどそれが君の支えになったなら
善行をしたと自分を褒めよう
僕は君のこと
わりとどうだってよかったんだけど

ヘッドホンをはずすと不規則な水の滴る音で世界は満ちていた
どおりで肌寒いわけだ
音の激しさにつられるように寒さを強く感じるようになり
私は着替えようと立ち上がった
窓の外が光る 遅れて音がする
電化製品の心配だけして私はパジャマに着替え
子守歌のような雨音に包まれ布団に入った
雨の音 それは産まれる音
雨が生みだした夢を見て、私は眠りに誘われる

 

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第一詩集「雨音は乾いた猫の匂いがする」予約開始しました

雨椎零初めての詩集「雨音は乾いた猫の匂いがする」の予約が開始になりました。
6月15日に発売となります。
よろしくお願いいたします。

 

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