脊椎と雨音

詩人になりたい人の詩たち

青信号

歩行者信号の青色は勿忘草の香りがする。けれど雨の日のそれは遅れた葉桜の色。点滅は雨音に合わせて手を叩き、メロディとは違うテンポを刻む。私はその中を歩いていく。傘はどこかへ流れ行ってしまった。雨は私の血液になりたがっているかのように私に張り付いてくる。

雨の温度。それは黒い雨雲の体温であり世界のなみだ。今もどこかで誰かは泣いている。必ず。雨は代わりには泣いてくれない。共振して世界のどこかになみだの代わりの濁った水滴を落とし、その水滴は人体になりたがる。透明な雫である涙に憧れて。

木野花と地層で濾過され限りなく透明に近づいてやっと彼らは人に近づける。だから私は体にこびりついた雨粒を乱暴に払い落とす。君たちにはまだ早いよ。世界をもう一周しておいで。そしたら私の涙にしてあげないこともない。

 


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足音

どこからともなく聞こえるのです
私を追いかけてくる足音が
私が歩けば歩いてくるし
私が走れば走ってくる
必ず追いつかれそうなのに
それは私に追いつきはしない
後ろを振り返っても誰もいない
それはもしかしたら私なのかもしれないと
気付いたのは昨日のことでした

 


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たそがれどき

黄昏時は誰そ彼とき
あそこにいるのは誰だろか
夕立のあとの曇った視界に
ゆらりゆらりと人の影
さ迷っている幽霊だろか
宵の淵で揺らぐのは
自分の輪郭おぼろげに
きっと忘れていくのだろう
そして向こうへ行くのだろう
あれは一体誰だったか
くるりと振り向くその顔は
随分私に似ているな

 


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未完の物語

世の中には未完の物語の方が多いのだ
物語を紡ぐことに
疲れてしまった人
諦めてしまった人
やめざるを得なかった人
そんな人たちの物語が無数に存在する中で
完成させるばかりが良いわけじゃない
その道を辿ろうと思った軌跡
物語がはじめられたこと
そのことはきっと誇れることだろう

 


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終極

はじまりは終わりなのです
あなたが生まれたとき あなたのいない世界が終わった
あなたという存在が何かを観測するたび
観測前の世界が終わって新しい世界がはじまっている
だから終わりははじまりなのです
あなたが死ぬとき あなたがいた世界が終わった

 


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