脊椎と雨音

詩人になりたい人の詩たち

万年筆

一万円の万年筆で百均のノートに書き殴るのだ
今日あったこと
嬉しかったこと 楽しかったこと 悲しかったこと 苛立ったこと 虚しかったこと
生きたかったこと
死にたかったこと
読めなくていい ただ書き散らしたいだけだから
私の思いの覚え書きですらない
書き出すこと それだけが目的だから
読み返すことは想定していない
漢字を間違えたっていい
言葉を間違えたっていい
私の心にあるなにか それをペン先からノートへ流し込んでゆく
インクが滲むたびその分ノートは重くなる
この重さを受け止めてくれるのはこの万年筆とノートだけ
紺色のインクを滲ませて薄い紙にたっぷり飲み込ませて
私の思いを吐き出してゆく
たまに跳ねるインクの飛沫の艶やかなこと
つながった文字は海のよう
私は字の海に溺れてゆく

 


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